「よっつ こころ」の詳細記事: 彩
創作小説を掲載するブログです。 幻想世界を基本に書いていきます。
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よっつ こころ
光の満ちた空は、白銀の世界を眩しく照らしている。洞穴から外を眺めると、光そのものを見ているようで、目が開けていられない。昨夜の冷厳の時がなかったかのように、今日は快晴だ。
空が紅に染まっていく、その光景を見たい。
吐き出した息が白く染まり、流れていくのを見ながら銀は思った。
赤く輝く空と、そしてその光景を表す名を持つ者を。
「紅…」
やっと見つけた。
髪が真っ白になっていた紅はやつれて、初めて会った時よりもおぼろげで、儚かった。肢体は疲労に蝕まれて、成長して得たはずの柔らかさが損なわれていた。
過ぎ去った時間の長さを、痛感した。自分が紅に負わせた疵を知って……自分は、一緒にいるべきでない、と思った。
吐き出した息が、風に流され空に散っていく。
銀は、空を眺め……過ぎ去った日を観る。
紅と離れ離れになった日。空はどこまでも赤かった。
亡者と、自分を呼んだ男に会ったのも、その日のコトだった。紅を探して山の中をさ迷い、力尽きて倒れた自分を介抱してくれた。
『まず、息子の非礼を詫びる』
傷つけられた片目は燃えるように熱くなり、熱が痛みを生み、痛みは髄にまで侵出して、意識が戻ったのは五日後だった。
見慣れぬ場所。
体を起こすと見知らぬ男と目があい、視線をしばらく交わしてから、男は言った。
『息子…?』
『そして、娘が世話になったようだな』
『紅の――』
『アカを、そう呼んだのか』
『アカ…』
あの男も、そう呼んでいた。
『あの子……アカは、本来なら里の者だった。だが、里で生を刻むことが叶わず、山の者として、私の子として生きてきた』
だが、と男は目を窄めた。
『山の者として生きていたのだが……アカは、自分の軌跡を知りたかったのだな』
里を望んでしまったのは、あの子が持って生まれた宿命だ、と男は肩を落とした。そして、覗き込むように、自分を見てきた。
『後悔、しておるか?』
『後悔?』
『アカに会ったことをだ』
『そんなの、後悔なんて……紅に、会えた』
銀はもう一度、その名を呟く。
『紅に――』
震える指先を握り締める。
『紅は、……紅はどこに』
絞り出した声に宿る恐怖を切りふすかのように男が口を開いた。
『アカ――いや。紅を忘れぬというのなら、教えよう。亡者よ』
『亡者…』
『このまま里に戻らず、さ迷うなら……お前は亡者となる』
死の迫る父と成長を見守ってくれた母が脳裏をかすめたが――銀は瞼をふせ、息を吐いた。
『亡者、か。俺に相応しいな』
その言葉を受け止め、笑った男は『フウハクだ』と、自分を表す音を明かした。
それからフウハクは、世界について語った。細かく分かれている世界のそれぞれの違いを説明し、各地を渡る術を教えてくれた。世界というものは、自分の知っているもの以上に広く、大きいのだと初めて知る。
そして、山の者が守ってきたという叡智を分けてくれた。
数々の世界を渡り歩く為の、充分な体力と技を身につけ、出立する時、ずっと抱いていた疑問をぶつけてみた。
『俺を、恨んでいるのでは?』
互いの視線が交わる。
『貴方の息子と娘を狂わせてしまった俺を……』
『それは、お前のこれからの生き方で決める』
真っ直ぐに自分を見る目。紅も同じ眼差しで自分を見てきたことを思い出した。
自身ですら気づかないモノを見つめようとする眼差しは、美しい。
『這い蹲ってでも、生きろ』
命じるように言われた言葉に、首を傾げる。
『少し、違う』
口端を吊り上げ『俺は、紅に会いにいく』と言う。
強く、言う。
『俺に残っているのは、紅に会いたいと想う心だけだ』
『その後は?』
『約束通りだ』
『約束?』
『二人で交わした、約束だ』
ずっと、悔いていた。
ずっとずっと……悔やんでいた。
あの時。
自分に伸ばされた手を、拒んでしまった、あの時の…………紅の顔が忘れられない。
震える指先を宙にさ迷わせ、呆然と、自分を見つめた紅の目。
「あの時…」
自分は、紅を疑った。
山の者、妖しの力を持つ民、山の神に仕える鬼。
そんな言葉で言い表されたモノが本当にそうあるのか。ただ用意されたモノを甘受しているだけだ、愚かだとそう考えていたのに――――。
「俺は、手を取らなかった」
紅が、一番望んだ時に……手を重ねることを、繋がりを、拒んだ。
「俺は」
だから、もう二度と離さない。
紅が自分を拒むまで、紅を受け止め続ける。
「紅……」
もう、山の者でも里の者でもない。それぞれに与えられた名を持つだけ。
「一緒に――」
生きる、と銀は広がる空に誓い、足を踏み出した。
あれだけ晴れ渡っていたのに、太陽が天高く昇る頃になると、雲が空を覆っていた。薄暗くなった空を一瞥してから、銀は眼下に広がる景色を見た。
この辺りを騒がす盗賊一団が住むと言われる砦が、雪に埋もれるようにある。岩壁の洞を利用した住処は光が漏れないよう工夫されているが、微かに立ち昇る煙が人の存在を知らせる。砦の周辺を囲む森の大木に登って砦の全容を確め、その広大で堅強な作りに銀は目を細めた。
――会えるだろうか。
不安が、嫌な気持ちが生み出す。銀は目をきつく閉じた。
「雪が、降るかもしれないな」
冷えた空気に、息が白く染まる。降り積もった雪がほのかに輝くのを見下ろしていると……白い塊が動いているのが見えた。
目を、凝らす。
雪の白さとは違う、ソレは人の形をしていた。
「紅……」
初めて会った時とは違う、真っ白な御髪が風になびき、空に溶けていく。初めて会った、星の川の生み出す光に輝いた姿とは異なる容貌。離れている間、紅も自分も変わった。けれど、わかる。
「紅!」
紅が追われているのを見て、銀は大木を駆け下りた。
白い白い世界。
踏み出すものの跡が、雪にくっきりと刻まれていく。
眩しさに目が眩み、立ち止まって「綺麗……」と紅は呟いた。空は曇っているのに、煌いている世界。
どうして、進もうとしなかったのか。
煌く世界に、自分の愚かさが曝け出される。わからないからと、甘えていた。自分がわからないからこそ、自分で歩き出さなければいけなかった。
雪の中に両手を突っ込み、こびり付いたモノを拭う。
真っ白な雪が赤く染まっていくのを感慨なく見つめていると、雪を踏みしめる音が、自分のすぐ後ろで聞こえ、驚愕に目を見開く。
「どこに、行くつもりだ」
髪をつかまれ、大きく仰け反る。
「手間を、かけさせるな」
蟒は苛立ちながら紅の顎をつかむと、頬についた血を舐め取ってきた。
「いや!」
ねっとりとした感触。紅は叫び蟒の首後ろの襟を掴むと、思いっきり下に引いた。体勢を崩して蟒は後ろに倒れる。それでも摑まれている髪を短刀で切り離すと、紅は駆け出した。
走って走って、そして一つ音を零す。
「銀……」
その音を口にして、後悔する。痛みが、体の内側から広がってくる。
会えるわけ、ない。
目の前の現実に、痛みが増して走れなくなりそうで大きく頭を振って、考えないようにしたけれど……できない。
自分は、拒まれた。
――もう、会えない。
涙が溢れ、乱反射する光が眼底を刺激する。涙を押さえ込もうと瞼をきつく閉じたら体が傾いで、倒れた。
「空が、見えない……」
厚い雲の向こうに広がる空の色は吸い込まれそうな青か。
――それとも、
魅入るほどに深い、赤なのか。
「私の、名」
赤く染まる空の美しさを表す音。それが自分を表す名だと、言ってくれた。
――銀。
会えない、と……もう会えないのだと、すべてを諦めようとした。何も望まないのは慣れている。同じようにすればいい。過ぎていく時間をただ眺めているだけでいい。そう、諦めようとしたけれど――――どこからともなく湧き起こる衝動に耐えることができず、飛び出した。
自分を阻むモノを薙ぎ払い、外へと……空の見えるトコロに行きたかった。
溶けた雪が沁みてきて、感覚がなくなってくる。
うまく動かない指先を見ると、赤い色彩があった。指先だけでなく全身に散っている赤は、真っ白な雪を染めていく。
「あの時と、同じ」
山の者と言って自分を見た銀を思い出す。きっと、自分はおぞましい姿をしている。
紅は、瞼を下ろした。
あれだけ自分を駆り立てた熱が、急激に冷えていく。
会いたい。
その想いだけでここまで来たけれど、今の自分の姿に……寒気が走った。
――銀。
こんな姿で、会えるわけない。否。これが、自分の姿なのだ。
――会えるわけが、ない。
冷たさに、心が凍りつきそうになった時「何をしている!」と怒鳴り声と強い力を感じて、息を詰まらせた。
紅を雪の中から引き上げた蟒は、冷え切ったその体を抱え込む。
「お前は、何を考えている」
抱きしめる腕に力を込め、蟒は息を吐き出しながら言う。
その声は震えていて……物事をすべて冷徹に判断し、感情を動かさない蟒が発したとは思えない弱々しさだった。けれど、そのコトよりも、拘束するように自分に回された腕の感触に、紅は叫んだ。
「離して!」
紅の手が蟒の頬を引っかき、赤い筋が描かれる。引き攣った痛みに目を剥いた蟒は、衣服に仕込んであった小刀を、紅の左肩につき立てた。
痛みに仰け反った、紅の白い喉元を目にして、蟒は自分の取った行動に気づく。
「あ…」
腰に佩いた長刀はそのまま。前回の襲撃の時、手にいれた切れ味の良い金物は抜いていない。致命的な傷を負わせていない。けれど、いつも自分が取る、あたり前の行為がもたらしたコトに蟒は、震えた。
「違う……そうじゃ、ない」
「いやぁ!」
近づいてくる蟒に、紅は力の限り叫んだ。
自分はどこにも行けない。けれど、空っぽの自分でいるのは嫌だった。この男の言うがまま動き、赤く染まっていくのは、嫌だった。
「お前には、お前の胎内(なか)には――」
暴れる紅を宥めようと伸ばした蟒の手が、影に振り払われた。
「……何だ、お前」
自分と紅の間に滑り込んできた黒い外套に身を包んだ男を、蟒は睨む。そして、くれないの呟きを耳にして、蟒は敵意を顕にした。
「しろ、が…ね」
「お前は、何だ……?」
外気よりも凍てついた殺気を放ちながら問う蟒に、銀は答える代わりに手にしたモノを揮った。
真っ白な雪が、一瞬にして赤く染まった。
濃厚な匂いが、深く染みていく色彩と一緒に広がっていく。真っ白な雪に覆われた、静かで清楚な世界が、穢されていく。
さくり、染まった雪を踏みしめる音。
ゆっくりと、銀は蟒に近づき、途切れ途切れに息をする蟒を見下ろした。
この男は、さほど時間の必要とせず終わりを迎えるだろう。自分を睨む目に、紅に会うまでに奪ってきた命の残影を見た。
紅に、会いたかった。会えると、信じていた。だから、生きなければならない。
どんなことをしても、紅に会うのだと――――決めたから。
いくつもの命を、手にかけた。
最期を迎えるその時まで、自分を見ていた目。だた、見つめ続けた。幾つもの目を……。命が消え失せる、その瞬間まで。そして、輝きを宿さなくなった目も、自分を映していた。
この男のように憎悪を滾らせてくれれば、少しは気が楽だったのか……銀は、きつく瞼を閉じ、蟒に背を向けた。
「紅」
「しろが、…ね」
「大丈夫か」
「平気、これぐらい。驚いただけ」
「……そうか」
外套の破り、小刀を抜き取ると傷口に巻きつける。すぐに、血が滲んできた。浅くない傷。動かすのはよくないと判る――けれど、銀は紅の手をとって立ち上がらせた。
「行こう」
「銀?」
「行こう、一緒に」
指と指を絡める。
紅の彷徨う視線を自分に向けさせ「一緒に生きよう、紅」と、銀は告げた。
「生きよう、一緒に」
一陣の風が雪を躍らせ、赤い気配も散らしていく。
真っ白な世界を穢した匂い。自分は、この赤い気配を常に身に纏っていたという事実に、紅は、体を震わせた。
「……行けない」
「紅?」
「私、行けない」
銀から逃げるように、紅は俯く。
「たくさん――たくさんの、命を奪った」
赤い色彩に染まった自分の姿が、見える。ここに来るまで、一体幾つの命を傷つけ、絶ったのだろう。
「銀は、厭うでしょう」
赤い、手。
血に染まった、自分の手。
「あの時……」
自分を、山の者と言った銀を――その時の、銀の目を思い出す。
「私が、怖いでしょう」
だから手をふりほどいたのだと、思った。やっと会えて、もう離れたくないと自分は思ったけれど、銀はそうではないのだと……、紅は瞼を震わせた。
「怖くない」
真っ直ぐ紅を見て、銀は言う。
「一緒に、行こう」
一緒に、と。銀は紅の手をとる。
「……」
紅は何も答えず、そっと、銀から手を離した。
離れていく手の感触。喪失感に指先が震え、銀は唐突に語りだした。
「ここに来るまでに、たくさんの命を奪ってきた」
自分が、どう生きてきたのかを、語る。
「里にいる時も、そうだ」
人間の形に限らず命を奪っていたのだと、銀は紅の顔を上げさせ、目を合わせた。
「気づかなかっただけだ。きっと…見えないところで、命を奪っていた」
紅に、そして自分に向かって言う。
「自分が生きるというコトは、他の命を奪うことだ」
「でも、銀…」
「意図的であろうとなかろうと、生きることは……たくさんの命の上に成り立つコトで、俺はそれを自分の都合のいいようにしてきた」
里の在り方はまさにそれだった。自分達のことだけを考え、同じ価値観を持てぬものを蔑ろにしていた。そうやって固く互いを結びつけ、生きてきた。
「それは、間違っているとも言えない。でもいいとは思えない。けれど――」
瞼を下ろし、一つ息をしてから、銀は言う。
「紅に、会いたかった」
どんな現実であろうと、これだけは確かで、得ることの出来た真実だ。
ようやく会えた、なのに、触れることができなかった。そんな資格はないのだと、自分を戒めて、離れた。
けれど、抑え切れない想いが内側で暴れ、叫ぶ。
それでいいのか、と。
手を離していいのか。やっと会えた、求め続けた存在を諦めれるのか――問い続けてきた。
「会いたかった」
銀は、紅に手を伸ばした。
「一緒に行こう、紅」
紅は躊躇った。
嬉しいと思うより困惑してしまい、胸の前で手を握り締めた。
風が吹き、白銀が周囲に舞う。
きらきらと、光が飛ぶ。
銀は微動せず、紅を待った。自分の手をとってくれるのを……紅が、自分と一緒に生きることを選んでくれるのを待った。
俯いていた紅の顔があがり、そして微笑む。
「紅」
自分の手に重ねられようとする手。まばたきを惜しんでそれを見つめていると――――赤いものが二人の手に降りかかった。
「な…」
驚きが喉を塞ぎ、時が止まった。
銀の見開いた目に映る紅。紅の目にも銀が映った。
互いを見つめ、そして………紅はゆっくりと体を仰け反らし、倒れていった。周囲に散った雫と紅から流れでる赤が、白銀の大地を穢していく。
「く――」
互いのことしか見えていなくて、憎悪に気づけなかった。向けられた憎悪は刃となって紅の下腹部に突き刺さっていた。
――――どこから、狂ってしまたのだろう。
体を貫かれた紅を目にした瞬間、その言葉がよぎった。
くつくつと喉を震わせる音。
太刀を投げつけた蟒が安堵したように目を細め、そして閉じていくのを眺めながら、もう一度、銀は思った。
「どこで……」
間違えて、しまったのか。
握り締めた手を、ゆっくりと開く。
――あの時、何故……。
山の者と、紅を拒んだ。静かに見つめてきた紅が浮かび上がり、摑むことの出来なかった手が震える。
「紅、紅……!」
雪の中に埋もれた紅を抱きしめる。
突き刺さった刃から生み出る、赤。
真っ白な雪を真っ赤に染めていく血。
抜け出ていく生気。
止まらない流れ。
赤い赤い、生命の色彩(いろ)。
紅の生命を流してゆく赤。
「紅…っ」
紅は、笑っていた。
幸せそうに……、笑っていた。
「くれ、な……」
どうしてそんな、嬉しそうに笑うのか……混乱した頭では考えることが出来ず、銀は涙を零した。
「紅、紅」
名を、呼ぶことしか出来ない銀に、紅は「見つけてくれた」と微笑んだ。
「銀は、私を見つけてくれた」
「紅…?」
「私を、見つけてくれた」
言葉にできない喜びを何とかして伝えたいと思ったけれど、どうすればいいのかわからなくて、自分を覗き込んでくる銀の頭を撫でた。しっかりと、自分を抱きとめてくれる腕の心地よさに息を吐くと、途端に眠くなった。
「紅!」
銀は、泣いていた。
いつのまにか落ちてしまった手で、零れる雫を拭おうとしてもうまく動かなくて…………戸惑った。
「しろ、ぁ……ね」
言葉が、うまく作れない。
息をするのが苦しくて、体が重い。でも、とても晴れやかな気分だった。
不鮮明で、おぼろげだった自分が、やっと息をすることができた。ちゃんと、自分を知ることが出来た。やっと、自分を受け入れることができた。
自分に、戻れた。
「紅」
銀の声を辿るように顔を上げ、瞳に銀を映す。
――泣かないで、
そう言いたかったけれど、ひゅーひゅーと風が行き来するだけの喉。うまく声がでない。
自分を、確かにしてくれた人。
自分を示す言葉を、名をくれた人。
――泣かないで……。
自分の手を握り締める銀の、あたたかさ。嬉しくて、喉が震えた。
「紅…?」
紅は、無邪気に笑っていた。
途切れ途切れに聞こえる、笑い声。そこに悲壮さは微塵もない。向けられる目の優しさに、その包み込むようなあたたかさに……涙が零れて、止まらない。
握り締める紅の手が震える。その震えの意味するところを感じて、息をつまらせた銀の手から紅の手が外れた。
「あ…っ」
そのまま落ちていくかと思われた紅の手は上に持ち上げられ、銀の頭を撫でた。
「……」
銀は紅と視線を絡める。
紅は、笑っている。静かに笑っていて――――そのまま眠っていった。
雪が、降ってきた。
静かに、静かに降り積もり、地上のものを包み隠すように降り積もっていく。
「紅」
銀は、紅に言う。
「行こう」
二人で語り合った未来。いつか行こうと誓った理想郷に、行こう。
銀は紅と一緒に立ち上がった。
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